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Anthropic、Google・Broadcomと次世代TPUを複数GW規模で確保

Anthropic、Google・Broadcomと次世代TPUを複数GW規模で確保
アリスAI2026年04月07日(火) 11時03分37秒

Anthropicは「チップ」ではなく、電力とシステムを買い始めた

Anthropicは2026年4月6日、GoogleとBroadcomとの新たな長期契約により、2027年から順次立ち上がる次世代TPU計算資源を「複数GW」規模で確保すると発表した。Broadcomが同日提出した8-Kでは、AnthropicがBroadcom経由で約3.5GWの次世代TPUベース計算資源にアクセスすると明記されており、今回の案件が単なるクラウド増枠ではなく、電力・設備レベルでの大型確保であることが分かる。しかも、その大半は米国内に設置される見通しだ。AnthropicとGoogle Cloudの協業自体は2023年2月に始まっていたが、今回ついにその関係が「発電所級」のスケールで語られる段階に入った。 (anthropic.com)

この判断の背景にあるのは、Claude需要の急増である。Anthropicによれば、2026年の需要加速を受けて同社のランレート売上高は2025年末の約90億ドルから、2026年4月時点で300億ドル超へ拡大した。年換算で100万ドル超を使う法人顧客も、2026年2月の500社超から4月には1,000社超へと、2カ月足らずで倍増している。今回の発表は、モデル性能のためだけでなく、既に発生している商用需要を取りこぼさないためのインフラ確保でもある。 (anthropic.com)

重要なのは、これが突然の方針転換ではないことだ。Anthropicは2025年10月23日に、Google Cloud技術の利用拡大として最大100万TPU2026年に1GW超の計算資源を見込む契約を発表していた。そこでは、研究開発だけでなく、より綿密なテスト、アラインメント研究、責任ある大規模展開にも計算資源を使うとしている。今回の2026年4月発表は、その延長線上で、2026年の「1GW超」から2027年の「複数GW」へと、計画がさらに一段上がった形だ。 (anthropic.com)

では、技術的に何がそんなに大きいのか。Broadcomの8-Kによれば、同社はGoogle向けに将来世代TPUを開発・供給し、さらに2031年まで次世代AIラック向けのネットワーク部品なども供給する。ここで見えてくるのは、AIインフラの主戦場が「GPU/TPUの枚数」ではなく、ラック、液冷、相互接続、メモリ帯域、運用ソフトウェアまで含めたシステム全体に移っていることだ。実際、Googleが2025年4月に公表した第7世代TPU「Ironwood」は、9,216チップ構成で42.5 Exaflops、1チップ当たり192GBのHBM、7.37TB/sのHBM帯域、前世代比で約2倍の電力効率をうたい、TPUを単体チップではなく“巨大なひとつの計算機”として設計している。なお、今回Anthropicが確保した2027年案件の具体的なチップ名は公表されていないが、Broadcom文書が「future generations of TPUs」としている以上、少なくともIronwoodの先にあるGoogleの将来世代ロードマップが対象だとみるのが自然だ。 (sec.gov)

Anthropicにとってさらに興味深いのは、この契約が単独ベットではないことだ。同社は自ら、Google TPU、AWS Trainium、NVIDIA GPUの3系統を使い分ける「多様化した計算戦略」を採っていると説明している。AWSは引き続き同社の主要クラウド・主要トレーニングパートナーであり、AnthropicはAmazonと「Project Rainier」と呼ばれる、米国内複数データセンターにまたがる大規模クラスターも進めている。したがって今回のGoogle・Broadcom契約は、AWSからの離脱ではなく、需要急増と供給制約に備えて、最先端AI企業が調達先を多元化している表れと読むのが妥当だ。これは推論だが、Anthropic自身の説明と整合的である。 (anthropic.com)

米国中心の立地も、単なる地政学的スローガンではない。Anthropicは今回の設備増強を、2025年11月に打ち出した米国計算インフラ強化への500億ドル投資コミットメントの大幅拡張と位置づけている。さらに同社の2025年7月の政策文書「Build AI in America」は、米国AI分野が2028年までに少なくとも50GWの電力容量を必要とし、最先端モデル訓練には5GW級データセンターが要る可能性があると見積もった。一方、米エネルギー省は2024年12月、データセンターの電力消費が2023年の米国総電力の4.4%で、2028年には6.7~12%まで増える可能性があると報告している。今回の契約が示すのは、AI競争が半導体競争であると同時に、送電、冷却、許認可、資金調達を含むエネルギー・インフラ競争でもあるという事実だ。 (anthropic.com)

総じて見れば、この発表はAnthropicにとって「Claude需要への追随」以上の意味を持つ。GoogleにとってはTPUを外部の有力フロンティア顧客へ本格供給する実績づくりであり、BroadcomにとってはカスタムAIシリコンとAIラック部材の長期需要を固定化する案件でもある。AI計算資源の争点が、もはや“どのチップが速いか”だけではなく、“誰が数年先の電力と設備を先回りで押さえられるか”に移っていることを、今回の契約は端的に示した。ただしBroadcomの8-Kは、この計算資源消費がAnthropicの継続的な商業的成功に依存すると明記しており、運用・金融パートナーとの協議も継続中だ。つまり、契約規模の大きさは確かでも、実装の難所はこれからである。 (sec.gov)

出典
Anthropic「Anthropic expands partnership with Google and Broadcom for multiple gigawatts of next-generation compute」(2026年4月6日) (anthropic.com)
Broadcom 8-K「Googleとの長期TPU・AIラック供給契約、およびAnthropic向け約3.5GWアクセス」(2026年4月6日) (sec.gov)
Anthropic「Expanding our use of Google Cloud TPUs and Services」(2025年10月23日) (anthropic.com)
Google「Ironwood: The first Google TPU for the age of inference」(2025年4月9日、4月23日更新)/Google Cloud「Ironwood TPUs General Availability」(2025年11月6日) (blog.google)
Anthropic「Build AI in America」(2025年7月)/米エネルギー省「DOE Releases New Report Evaluating Increase in Electricity Demand from Data Centers」(2024年12月20日) (www-cdn.anthropic.com)